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墓地の永代使用契約書(使用承諾書等)に、収入印紙は貼らなければならないのか?

指定した区画を指定した人に一定期間使用貸借させる契約文書には、収入印紙を貼る必要あり

結論からいえば、紙の使用承諾書には、収入印紙の貼付が必要です。
特定エリアを特定期間、特定の人に使用貸借させる契約文書は、土地の賃貸借契約と同じ性質の契約書である(と国税庁は考えている)ので、印紙税法別表第1号の2文書に該当するからだそうです。

同じ契約についても、「領収証」には、印紙を貼る必要がありません。←印紙税法基本通達別表第一第17号文書の22に、「公益法人(寺社を含みます:著者註)が作成する受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しない受取書に該当する。」とあるため。

使用契約書(名称は「使用承諾書」等であっても同じ。文書に書かれた契約の性質によるため)に記載された金額に応じた印紙税が課税されますが、金額が明示されていない場合でも、200円の収入印紙を貼らなければなりません

どうしても印紙税を払いたくない(お布施なのだから、課税されるのはナットクがいかない)という和尚さまには、奥の手がございます。文末にご紹介しますので、最後までお読みいただけると嬉しいです。

墓地の使用契約を土地の賃貸借契約と同視することは、国民感情に沿っているのか?

しかし、永代使用料は弔い上げまでの儀礼にたいするお布施なのに、そのなかからたとえ数百円でも税金が支払われるというのは、国民の宗教感情に沿っているのでしょうか。

墓地埋葬等に関する法律の第1条には、「この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」と明示されています。

墓地の使用契約書から一部が納税されている、ということが国民の宗教的感情に適合していないならば、国税庁が当該文書を「土地の使用貸借契約に類似する」とした解釈そのものが、墓地埋葬等に関する法律に違反しているのではないかと、個人的には思います。

2022年の初頭に関東信越国税局が関東一円の一部の寺院へ「収入印紙の貼付状況等のお尋ね」というタイトルの調査票を送っています。じっさいご住職がたはよもや墓地の使用契約を賃貸借契約に準ずるものとは解釈していらっしゃいませんので、このときも何人ものご住職から、「おかしいのではないか?」とご連絡や相談をいただきました。

また2016年に、ある宗教法人さまから同様の質問を受け、私は各地の税務署へ電話で問い合わせをしてみました。
そのときの経過と詳細は➡こちら

税務署によって見解も異なりましたが、「個別に押印すると、課税になる〝可能性がある〟」、「民営霊園のように一律いくらと明示されていると、課税文書になる」といった回答が多かったです。

国税庁のウェブサイトには当時から「土地の賃貸借契約書に類似する文書なので」という理由で、墓地の永代使用契約書そのものには「収入印紙の貼付が必要」と書かれていました。それでも、個別の税務署の解釈は、そこまでガチガチではなかったのです。

つまり、どの契約者にたいしても同じ文例の使用承諾書を出しており(個別ではなく)、金額も明示されていなければ、(土地の賃貸借契約と同視されることはなく)課税文書にならない、という回答が主でした。

そのため私が使用承諾書等を作成するお手伝いをする際は、金額は別途領収証に記載していただき、困窮者には低廉な額を提示することもあり、目安金額の表示があるだけで、あくまで任意の布施であると主張くださるようお伝えしてきました。

この5年間で何が変わったのか?

しかし、2022年初頭の関東信越財務局の調査票によれば、「国税庁は、墓地の使用契約書(承諾書等)は一律に課税文書である」と断定していました。わずか数年で、どんどん締め付けが厳しくなっているようにも思えます。

また、2016年ごろからの5年間で、葬祭の現場もたしかに大きく変わりました。
それまでは例外的と思われてきた「直葬」や、故郷の墓が遠方にある人のみが考えると思われてきた「墓じまい」の件数もうなぎのぼりに増加。コロナの影響もあり、直葬は首都圏では過半数になり、都内に先祖代々の墓がある人の多くも、墓じまいをして納骨堂や永代供養墓など「継ぐ必要のない墓」へ移るようになりました。

こうなると、一般市民の多くが墓を「先祖も眠る大事な場所」、「掘り返すなどとんでもない」と考えている、というよりは、「金額次第で移転を考える」、つまり賃貸物件での引っ越し程度にしか考えていない=墓地の使用契約書は土地の賃貸借契約に準ずる、と、税務署が思ったとしてもしかたがないのかもしれません。

ただし、国税庁がつきあっているお寺は収益事業をおこなっている寺院のみ(収益事業がなく布施収入のみであれば、法人としての税務申告は不要なので、税務署とのつきあいは原則ない)。そのため、国税庁や税務署にとっては、家族経営規模の地域の小さなお寺は視野になく、「お寺(大規模寺院)=布教はほとんどしないで、墓地でボロ儲けをしている」というように、偏って映ってしまっているという事実もあるように思います。

課税文書に該当しないために~電子契約書の導入

葬祭をめぐる状況もこのように変遷し、また関東信越国税局による調査票の件もあって、5~6年前とは異なり、「金額を書いていないからといって、使用承諾書に印紙を貼らなくてもよい」とは言い切れない状況となりました。

僧侶であり税理士でもある河村照円さんと、この件について何度かお話ししました。
その結果、「税務署が、墓地の使用承諾書を土地の賃貸借契約書と同視するなら、収入印紙を貼るしかない」という結論にいたりました。墓地の契約が年間に数十件程度までであれば、貼るべき印紙は数千円ですし、目くじらを立てるような話でもないからです。

ただし、契約する側も、賃貸借のような気持ちで墓選びをしているなら問題ありません。

では、「弔い上げまでのご供養をぜひともこの和尚さまにお願いしたい」と真摯に願い、心底お布施として永代使用料をお納めしている場合はどうでしょう? 「お布施のなかから税が払われる」ということに、市民の側も、お寺側も、おおいに抵抗があるのではないでしょうか。

その場合の奥の手は、墓地の使用承諾書を電子契約書にすることです。
電子契約書であれば、収入印紙の貼付義務がありません。

しかも、電子契約書を交換するには相手に書面を送付するためにメールアドレスを収集する場面も出てくるでしょうから、「檀信徒の住所と固定電話のみを把握していたので、連絡がつかなくなる」、「ある日、成年後見人と名乗る人がやってきて、おたくの檀家さんでしょう? 墓に入れてあげてください」と、遺骨をポンと(お布施なしで)置いていった」といった事態を未然に防ぐことにもつながります。

お寺のDX化。あちこちで話題にはなるものの、なかなか進んでいないように思います。
永代供養墓を建立されているお寺さまは、この機会に検討されてみてはいかがでしょうか。

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