【2023年3月追記】自筆証書遺言の預託制度は、家庭裁判所への「検認」を省略できる大きな一歩として注目されました。しかし弊職が所属している相続マーケティング研究会において、預託制度を利用していたお客様の相続発生時に「証明書」を発行してもらう際に被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍(きょうだい相続の場合は、異母きょうだいの確認のため、両親の生まれてから亡くなるまでの戸籍も)を集めなければならず、けっきょくは「検認」と大差ない手間がかかるということが報告されています。
7月、自筆証書遺言の預かり制度が始まります
2020年7月10日から、法務局での「自筆証書遺言の預かり制度」がスタートするのです。
これまで、改ざんや隠ぺいが懸念され、また裁判所へ最低2度も出向かなければならない「検認」という手続きが必要だった自筆証書遺言ですが、それらのデメリットは消えることになります。
法改正じたいはだいぶ前から知られていましたが、「その手数料がいくらなのか?」が長らくわからず、じっさい気軽に使える制度になるのかがわかっていませんでした。
そして、「検認が不要になる」という最大のメリットは、すべての自筆証書遺言についてではなく、あくまで上記の制度を利用し「法務局へ預けた場合のみ」なので、注意が必要です。
頼みやすい保管申請手数料
3月31日に発表された手数料は以下のとおり。
申請・請求の種別 | 申請・請求者 | 手数料 |
---|---|---|
遺言書の保管の申請 | 遺言者 | 一件につき,3900円 |
遺言書の閲覧の請求(モニター) | 遺言者 関係相続人等 | 一回につき,1400円 |
遺言書の閲覧の請求(原本) | 遺言者 関係相続人等 | 一回につき,1700円 |
遺言書情報証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき,1400円 |
遺言書保管事実証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき,800円 |
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 | 遺言者 関係相続人等 | 一の申請に関する申請 書等又は一の撤回に関 する撤回書等につき, 1700円 |
ご覧のとおり、非常に頼みやすい金額でした。
公正証書遺言との違いは?
自筆証書遺言は、作成するのに費用はほとんどかかりません。紙とペン、それから不動産があれば登記情報を取得するのに多少の手数料がかかる程度です。
その〝ほとんど費用をかけずに作成できる〟自筆証書遺言。これまでは、改ざんや破損、あるいは発見されないおそれなどがあり、きちんと遺言をのこしたいのであれば公正証書遺言一択である、とまで言われる場面がほとんどでした。
預かり制度が始まれば、改ざんや破損の心配はなくなります。親族間に争いのないケースでしたら、自筆証書遺言をしたため、法務局へ預けるだけでも十分といえるようになるかもしれません。
しかしながら、自筆証書遺言には「証人」がつきませんから、あとで「認知症になってから書いたものだ」などの疑いをかけられると、証明することが難しくなります。
相続人間に争いが予想されるような場合は、やはり今後も、公正証書遺言にすべきであるということは言えるでしょう。
自筆証書遺言のチェックは専門職に
おつくりになられた自筆証書遺言は、多少の費用を払うことで専門職にチェックを依頼することもできます。
形式が民法の求める条件にかなっているかどうかをチェックするだけならば、どの士業でもたいていできるかもしれません。
しかし、チェックをお願いする士業の種類によって、観点はだいぶ違います。
資産の分けかたについてのアドバイスや、二次相続(ご夫妻のいずれかが亡くなった場合を一次相続とするならば、そのかたが亡くなってお子さまが遺産を継がれる場合を二次相続といいます)をふまえた節税対策についてのご相談であれば、税理士、会計士、FPなどの資格者に頼むのがよいでしょう。
不動産を多くもっていらっしゃり、地目変更や投資物件の整理をしなければならないときは、名義変更登記のプロである司法書士に相談しておくのもよいでしょう。
弊事務所であれば、FP的見地からのアドバイスに加え、墓じまいや死後事務についてのアドバイスを含めたご相談が可能です。
ご心配なときは、相談料はかかりますが、二種以上の士業者のアドバイスを受けると多方面からの視野が加わり、最適な遺産相続に近づけることができるでしょう。
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