お寺との関係は特段悪くないけれど、都市部に住む子どもたちが墓参しやすいように、納骨堂を契約してくれたから、故郷の墓は撤去(墓じまい)したい。
というご相談が増えています。でも、ちょっと待ってください! お寺は、故郷に残る親戚代わりになってくれます。
いまは元気でも、いずれ病院や施設へ入所しなければならなくなったとします。
子どもたちは遠方にいて出張などもあり、連絡しても駆けつけるまでに半日以上かかるという場合、病院や施設から、「近隣にいて緊急連絡先となってくれるかたを決めてください」と言われます。
ご近所づきあいはあったにせよ、別世帯のかたに頼むのは無理がありますよね。
引退世代でも孫の世話や健康維持施設への往復、通院の予約などなにかと多忙な昨今、親戚にすら、緊急時の対応をお願いするのは気が引けるものです。
その点、代々おつきあいしてきたお寺さんなら、親戚代わりになってくれます!
お寺はもともと24時間対応ですし、容体の急変や訃報といった連絡にも慣れているので、そうした点で気を遣う必要がありません。
墓じまいは、死後事務委任をお寺にお願いしてみてからでも、遅くはないのです。
相談の結果、和尚さまが請け負ってくださった場合、具体的には、地域の公証役場へ一緒に出向いて、次のような内容の「死後事務委任の契約書」を作成します(公証役場の手数料がかかります。相談の時点では無料です)。
私の最期が近づいたら、病院(施設)から○○寺へ連絡がいきます。
その場合、誰と誰に連絡してください。
通夜と告別式はどのようにしてください(費用についても目安を定める)。
永代供養は△△納骨堂にお願いしてありますが、通夜と告別式の導師は○○寺の和尚さんにお願いします。
あくまで文例ですので、親族や公証人とも相談して盛り込む内容を決めましょう。
※「死後事務をしてもらう代わりに、A通帳の預金を寄進する」など負担付遺贈の形式にすることもできますが、その場合は「遺言」になるので証人が2名必要です。
葬儀にかかる費用、枕経と通夜葬儀のお布施、緊急対応をお願いするお礼などに相当する金額を、まとめて預けておきます。
もしも自分はお寺の墓へ入らず、墓じまいをするなら、墓の撤去費用や閉眼供養のお布施ももちろん託しておきます。
このように最期のお願いを託すことで、お寺との関係を円満に保ったまま、自分の代での墓じまいを遂げることもできるのです。
すべてのお寺さまが快諾してくださるとは限りませんが、気の重くなるような墓じまいの相談に行く前に、「ほかに頼れる親族がいません。一緒に公証役場へ相談に行っていただけませんか?」とお願いしてみるのは、悪くないことと思います。