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ある日、成年後見人が骨壺を

このウェブサイトの統計情報をチェックしていたら、数日前に、「成年後見人弁護士お布施を出さない」というキーワードで調べてくださったかたがいらしたので、このことについて少し考えてみました。

お調べくださったかたの質問内容はわからないのですが、じっさいお寺さまのほうから、

成年後見人だという人が突然やってきて、〝こちらにお墓のある●●さんが亡くなりましたので、よろしくお願いします〟と置いていった。どうすればいいでしょう?

というご相談が月に数回はあります。

お布施なしで、いきなり骨壺をポンと置いていくなんて失礼な、ということなのだと思います。
後見人がついていたということは、過去数年は墓参にも来ることができていないのでしょうし、管理費なども滞納していたかもしれません。

お寺としては、滞納されている管理費や、納骨供養のための費用、その人のあと墓を継ぐ人がいなくなるならば撤去工事費用なども払ってもらわないことには、大赤字になってしまいます。

成年後見人の業務範囲は、原則「生きている間」のみ

しかし、家庭裁判所からは被後見人(後見されている人)が生ききている期間の報酬しか、成年後見人には支払われません。民法上も、契約はどちらいか一方の死亡により終了しているのが原則です。

とはいえ、まったく身寄りのないかたの後見をしてきて、火葬や納骨の世話をせずに放置するわけにもゆかぬから、必死の思いで菩提寺を探し出し、善意のボランティアとして、お寺まで運んでくれたのだと考えるべきです。

後見がついたあとは、請求書等のない金銭支出はほとんどできない

親族のいない檀信徒が認知症などの状態となり後見人がついた(本人が被後見人となった)場合、生前であっても、注意が必要です。

ご本人の資産状況にもよりますが、回忌法要のお布施など、定額ではなく請求書も出せない金銭は、支出してもらいづらくなります。

墓地の管理費については、使用契約書をはじめ、毎年決まった金額を支払ってもらっていたという書面があれば、後見人も支払うことができます。しかし、お布施となると、「長年回忌法要の折には、その金額をお布施してきた」という親族の証言や、「亡くなった妻の回忌法要には毎回●万円を払ってほしい」と書かれたエンディングノートでもない限り、「いくら払いたい」という本人の意思が確認できないため、成年後見人や家庭裁判所も支出を認めることができません。

本人の資産が減ってしまうと、最後まで世話をしつづけることが難しくなるので、できうるかぎり不要な出費は抑えるのが後見の世界です。

都市部の大きなお寺で、1回のお布施が数十万ともなると、たとえ「親族の回忌法要のたびにそのくらいの金額を支出していた」という証拠があったとしても、支出することが難しくなるかもしれません。
いまは「後見制度支援信託」といって、法定後見人がつくと500万円以上の現預金は信託銀行へ信託される場合が多いので、容易に動かすことのできる現金が(残る余生で)500万円しかないことになるからです。

本人が亡くなるまでに何度の回忌法要があるかわかりませんが、数十万円規模の支出となると、将来の病気療養費などを目減りさせてしまう可能性があるため、どのような後見人であっても、使うべきか判断に悩むところと思います。

檀信徒は仏弟子。病気や認知症になったとき放置しない

こうしたことを避けるためには、お寺で終活セミナーなどを企画し、ご住職と対話しながらエンディングノートをじっさいに書いてみるような機会をもうけるのがよいと考えます。

親族を頼ることが難しい信徒さまについては、供養や墓についてどのような考えをお持ちなのか、医療についてもどの程度利用したいと考えているのかなど、仏弟子として親族同様に知っておく必要があろうかと思います。

元気なうちに話し合えば、「お寺さまに失礼になるようなことは、したくない」と言ってくださるかたがほとんどでしょう。
お寺を人生を語らう場として開放し、月に一度でもよいので法話会と茶話会をセットで開催して、〝看とりステーション〟としてお寺を頼りたい信徒を把握しておくことをお勧めします。

たえず人生観や葬儀供養についての思い、考えをわかちあっていれば、長期入院や施設入所が迫ったときには必ず一報をくれるでしょうし、冒頭のように、「ある日突然、骨壺になってやってくる」ということは避けられるはずです。

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