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「安い納骨堂に納骨するから永代使用料の一部を返還してほしい」と言われたら?

寺院墓地を未使用で解約するので、何十年も前に支払った永代使用料の一部を返還してほしいと言われたら、どう答えますか?

なんと過去に「不当利得アリ」で返還を命じる判決が!

お父さまが亡くなりました。次男だったお父さまは、20年ほど前に、あるお寺で自分の墓を建て、永代使用料を一括で払っていました。
遺族は奥さんと最近嫁いだ娘さん一人。母娘は最近、「継承する必要のないお墓」のことを勉強し、お父さんが建てた石のお墓ではなく、お父さんの遺骨を新たに契約した永代供養墓に入れたいと考え始めました。このお墓には、まだどなたの遺骨も入っていません。そこで、「お父さんが支払った永代使用料は、おそらく三十三回忌までは入る予定の金額だから、契約してからまだ20年しか経っていないなら、一部は返金してもらえるのではないか」と考え、お寺へ相談に見えたのです。

平成19年に京都地裁で判例が1つ出ています。

今回の相談事例と同様に、故人Aの相続人が、Aさんが生前に永代使用契約した墓地(墓石は建っていない。契約時65万円一括払い)を未使用で解約するので、宗教法人に対し、「不当利得」(使われていない権利)があるだろうと訴えたものです。
1審ではなんと、「宗教法人からAの相続人に4割相当の26万円(+利息)を支払え」との判決が出ました。
しかし、宗教法人側が不服として控訴し、第2審では覆って「不当利得なし」とされました。

「不当利得なし」の判決理由

①一括払い+使用規則に未使用解約の場合の返還金が記されていない以上、返還を予定しないものであったと解される。永代使用料は、使用期間に対応した使用の対価とはいえず,墓地使用権の設定に対する対価と解するのが相当。
(つまり、「ついのすみかを得られた」という安心のもとにAさんは亡くなるまで過ごせたので、その価値が65万円ということでしょう)
②(仮に返還を予定するものであったとしても)宗教法人側は、14年間の間、これを他に使用させることができなかったのだから、その間に消費されており、不当利得は残存しない。
③(あとになって「使用しない」と申し出たことは)墓地使用権の放棄であって,支払済みの本件墓地使用料の全部又は一部について不当利得返還請求権が発生するとは
いえない。

お寺さまにとっては、非常に心強い判決ですね。

ただし、この判決の平成19年から現在までの間に、葬祭事情は大きく変わりました。
現在は、より安価な葬りかたが浸透していますので、注意が必要です。
そして判決理由の②で、「14年間に消費されている」とあるので、契約から現在までの期間がこれよりも短ければ、残存利得がある、と言われてしまう余地があります。

以下、私見です。

・もし墓石がまだ建っていなかったとしても、外柵工事などが完了していれば、「撤去工事」をする必要があろうから、その工事費を解約者が支払い更地にして戻してもらうのが当然。
・(カロートや外柵がすでにあるなら)返還すべき金額があるとしても、撤去工事料と差し引きしたら、何も残らないのではないか。
・更地で、そのまま他の契約が可能であるなら、ケースバイケースですが、お気持ちで数割返還なさるのもひとつの方法かもしれません(あまり事を荒立てられてしまうよりは…)。

生き死にのことを話せる場が必要

しかし本来は、お父さまが一括払いされた時点で、亡くなるまでの間の「ついの住み処があるという安心感」を買われたわけですから、たとえ更地のまま未使用だったとしても、永代使用料はその安心で消費されているはずと思います。
「墓があるから安心だ」ということを、もしもお父さまが生前におっしゃっていれば、娘さんとてこのような申し出はしなかったかもしれません。

生き死にの話を気軽にできる環境や場づくりを、お寺が主導で提供してゆくのもこれからの課題かもしれません。

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