基本的にはおっしゃるとおりです。
しかし、まったく問題がないわけではありません。
相続開始後、被相続人(ご主人)の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を郵送で取り寄せたのち、家庭裁判所に赴いて「検認」を受けなければ、銀行口座や不動産の名義変更ができません。
戸籍を集め終え検認を受けるまでに、たいていは数ヶ月かかりますので、奥さまの心理的負担や労力を考え、公正証書遺言にされることもご検討なさるとよいでしょう。
また、稀な例ですが、ご主人が自分には兄弟がないと信じていらしたところ、ご主人が成人されたのちに、ご両親が、知人の子が遺児になっていたのを見かねて養子にしておられ、戸籍を取得してみるとじつはご兄弟があったという事例もありました。
ご兄弟には遺留分がありませんので、この場合でも遺言書があれば、奥さまに全財産を相続させることは可能です。
ただし、奥さまへの相続で相続税がかからないのは、「ご自身の法定相続分の範囲内、もしくは1億6千万円まで」です(平成27年3月現在)。
奥さまの法定相続分が3/4、残り1/4はご兄弟の法定相続分ということになりますと、遺産額によっては、1/4に対しては相続税がかかることになります。
令和2(2020)年7月から、自筆証書遺言の預託制度がスタートしました。
法務局のうち預託をうけおう一部の役所で、3900円で実施できます(令和2年7月現在)。
この預託制度を利用する場合には、不動産については登記情報を取得して遺言書本体に添付すれば、遺言書じたいには不動産の内容を詳細に記載する必要がありません。銀行預金についても、預金通帳の写しを添付することで、遺言書本体には口座番号などを記載する必要がなくなりました。
ただし、添付の方法は厳格に定められており、まちがえていると有効な遺言書になりません。用紙も、A4サイズの所定の余白をあけて書かなければならなかったりと、決まりがけっこう多くなっています。
そして預け先は法務局なので、法律に詳しい人が内容をチェックしてくれると思ってしまいますが、内容については一切助言をしてもらえません(形式については、答えてもらうことができます)。
そのため、預託制度を利用する場合でも、遺留分を侵害してあとで争いになるようなことはないかなど、専門職にみてもらうほうがよいとされています。
なお、預託制度を利用する場合の提出代理は司法書士に依頼することができ、行政書士は内容の相談には応じられますが、預託の代理はできません(提出先が、法務局なので司法書士の専門領域となります)。