宗教法人設立・墓じまい・遺言相続etc.|ご依頼は、こちらOK行政書士事務所へ
こちらOK行政書士事務所
マナーモードで着信。料金当方負担で折り返します

コロナで葬儀を縮小したとき考えるべきこと

家族葬・直葬では、一番大事なことが欠落する

20年前の葬儀は、人生を変えるほどの威力をもっていました。

ドラマにもなった湊かなえ『リバース』でも、教師役の青年は父親の葬儀で、教師になることを決意したというくだりがあります。

仕事熱心で家族との時間を削ってきた父を親族としては認めていなかったけれども、その父の葬式で、

「こんなにたくさんの生徒から慕われていたのか」

と知ることができ、父への不満な思いも氷解。同じ道を志したと。

ほんとうの葬儀は、人生観を変える

拙著『瞬間出家|聖よ、日本の闇を切りひらけ!』の第2章最後の項でもご紹介している、離島出身の営業マンMさんのエピソードも、同様の話。

小さな行政書士事務所でも、たくさんのメーカーやリース会社の営業マンとおつきあいすることになるのですが、Mさんが異彩を放っているのは、自社製品ではないツールのことでも、不具合があると〝わがことのように〟とことん解決しようと努力してくださることです。

そうできるのはなぜですか? と問うてみたときMさんは、

祖父の葬儀のお蔭なんです。

と即答し、昔ながらの荘厳な葬儀の様子を語ってくれました。
数多くいたきょうだい、いとこたちのなかで、Mさんは一番年長でした。
大きな釘がおじいさまの棺の四隅に打ち込まれる光景をみつめながら、「自分が、小さいこの子たちに、祖父の生きざまをつたえてゆかなければ」と重責を感じとったのだそうです。

このたび15分弱の動画でもお話ししたので、本を読むのはちょっと時間が……というかたはぜひご視聴ください。

コロナで葬儀縮小したら必ず穴埋めすべきこと|20年前の葬儀式は、若者の人生観を変えてしまうほどのパワーがあった! 社会倫理の腐敗、若年層の自死率高止まりとも無関係とは言い切れない、家族葬・直葬の弊害

昔の葬儀は、子どもたちには倫理意識を植えつけてくれた

警察署とのつながりも深いある知人僧侶から、「オレオレ詐欺の集団に入ってしまう少年たちは、葬式に出た経験がゼロである割合がとても高い」という話をきいたことがあります。

はたして葬式に、人を犯罪に近寄らせないようにさせるような作用があるのでしょうか?

この図のように、20年ほど前までの通夜において、大人たちはいつ終わるとも知れぬ故人についての語らいをくりひろげるのが常でした。

退屈しながら部屋の隅で遊んでいる小さな子たち、小学生や中高生にしろ、誰もがきっとこう思ったのではないでしょうか。

死んだらこんなに大勢が集まって噂話を何時間もするんじゃ、ひとさまからうしろ指をさされるようなことは、できないな。

と。

無口で怖いしかめ面をしていた祖父も、幼い頃は自分と同じような失敗をしていたという話や、社会人として慕われてきたこと、趣味の友達から出てくる意外にもひょうきんなエピソードなどを耳にするうち、「人は、一面だけではない」ということをおのずと知ることになったでしょう。

あるいは、「人間て、厚みがあるものだな」と思ったかもしれません。「自分も、そんなふうに大きな人物になりたい」と心に誓う人も多かったことでしょう。

いずれにしても、「人生って、あっけないものだな」などとは思わせない、重々しさがそこには存在したはずです。
この重々しさは、直葬や、よく見知った親族友人だけの家族葬では、とうてい表出しないものです。

何度も聞いたことのある、いつものエピソード。それだけが繰り返されて終わる別れ――それでは、若い人たちが人生のはかなさだけを感じ、虚無感にとらわれるのも無理はありません。

《昔のお通夜では、ひと晩じゅう線香をたやしてはいけないと信じられていたので、大人たちは時間を気にせず夜半過ぎまで語らった》

葬儀を見直せば、社会倫理も改善

2020年夏・第2弾が放映中のドラマ「半沢直樹」で、半沢が出向先のセントラル証券の部下・森山に職業倫理を語ります。

 「自分のために仕事をしているからだ」 半沢の答えは明確だった。「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る。わかるか?」 

真顔でうなずいた森山の肩を、半沢は微かに笑ってぽんとひとつ叩いた。

ドラマ「半沢直樹」原作 ロスジェネの逆襲: 2020年7月スタートドラマ「半沢直樹」原作 Kindle版

そういえば半沢も、中学生のとき自死した父の言葉で、この職業倫理を身につけたのでした(葬式で、ではありませんでしたが)。

死別の事実を、正しい儀礼によって、きちんと〝腑に落とす〟こと。そのことが、冒頭に語ったMさんの場合と同じように、若い人たちを大きく成長させるということは、ドラマでも小説でもしばしば描かれているのです。

やむなく直葬を選んだならば……

コロナの影響で東京都内の民間火葬場が、「10人以上の会葬禁止・会食を伴う集いは禁止・ワンデー葬推奨」としたため、首都圏の多くの葬儀社もこれに従い、2020年は葬儀模の縮小化に大きく拍車がかかりました。

義理で呼んでいた僧侶を呼ばなくなって、気が楽だった。
安く済んでよかった。

もちろんそんな声をたくさん耳にします。

でも、大切なことを忘れていませんか?

平成の後半期、家族葬がブームとなり、故人の幼少期や現役時代のつながりなど、同居の親族もあまり詳しくは知らなかった人間関係が、葬儀の場から排除されました。

家族葬が普及して10年ほどたったころから、食品偽装や官僚による偽造文書発覚、大手メーカーの実験データ改ざんなど、職業倫理が腐敗した報道を頻繁に耳にするようになりました。

葬祭の主流が家族葬・直葬へと変遷したことと、「自分の利益や保身しか考えない大人が増えたこと」とは、無関係ではないと、葬祭カウンセラーとしては感じるのです。

×