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相続法改正、どう変わる遺言?

自筆証書遺言、パソコンで作成できるのは「財産目録」

ことしの1月から、自筆証書遺言の方式緩和として「パソコンで作成してもよくなった」というのを耳にされたかたがいらっしゃると思います。
ただし、「何を誰にあげるのか」という本文は、いままで通り全文をご自身で書いていただく必要があるので誤解のないよう留意したいです。
本文までも自筆で書かなくてもよいのであれば、「〝自筆〟証書」とは呼べませんからね!

パソコン(ワープロソフト)で作成してもよいのは、財産目録です。
また預金については、預金通帳のコピーをつけてもよくなりました。
そして、印刷した財産目録や通帳のコピーに、署名と押印が要求されていますので、ご注意ください。

自筆証書遺言の保管制度が始まる(2020年7月10日~)

これまで、自筆証書遺言を遺されても、(法定相続人を特定するための戸籍一式をぜんぶ揃えたうえで)家庭裁判所へ「検認」を依頼し、1ヵ月半ほど待たされたあとハガキで呼び出され、もう一度家庭裁判所へ赴いて、検認済みの遺言書を受け取らなければ使えない、という理由で、自筆証書遺言が敬遠されてきました。

この「検認」をナシにしてくれるのが、このたび改正予定の「自筆証書遺言の保管制度」です。これについて定めた法律の名前が「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)」で、 遺言者の「住所地」、「本籍地」、「遺言者所有の不動産の所在地」のいずれかを管轄する法務局で保管されることになる予定です。保管費用等は、施行日である2020年7月10日までに定められるとのことで、現時点では未定です。

自筆証書遺言保管制度のメリット

☑ 紛失、偽造、変造、隠匿等のリスクが避けられる
☑「検認」の手続きが不要になる
☑ 遺言者の死亡後、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付が行われると、遺言書保管官が、他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知してくれる

施行日まで間があるので、この通りに実現されるかわかりませんが、3番目が実現されると、メリットは大きいと思います。

ただし、この改正によって公正証書遺言の必要性が薄れたかというと、そうでもありません。
保管を依頼するには、(偽造等を防ぐため)本人が出向かなければいけなくなる可能性が大きいですし、保管所では形式をチェックはしてくれますが、内容について審査をしてくれるわけではありません。作成時に公証人や証人が立ち合わない以上、「認知症状があるのに強要によって書かされた」などという疑いがかかり、あとで裁判等になるおそれは、公正証書遺言の何倍も残ります。

公正証書遺言も、よりモメづらくなる

自筆証書遺言にしろ公正証書遺言にしろ、「執行者(その遺言の内容を実現してくれる人)」を指定した場合、現在の法律だと執行者は、法定相続人や利害関係者に通知をしなくても遺言の内容を実現することができてしまいます。驚くべきことですが、以前、きょうだいのうち相談者のみにかなり有利な内容の公正証書遺言案を相談者が望んだとき、「遺留分までは侵害していないものの、これでごきょうだいは納得されるでしょうか」と公証役場で横やりを出したところ、公証人から「そんなの他の相続人に言わないでやっちゃえばいいじゃない」と言われたことさえあります。
地域で行われる行政書士会による無料相談でも、「知らないうちに遺言執行されてしまった」というご相談が2回に1回くらいはあります。

新法案には「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。」という条文が追加されます。
これにより、「知らないうちに遺言執行されてしまった!」というケースは法律違反となり、執行者を指定した公正証書遺言は、これまで以上に〝モメることを避ける効果〟が増すといえます。

自筆でも公正証書でも、「執行者」をつけるのがポイント!

自筆証書遺言であっても公正証書遺言であっても、「執行者」を指定しなければ、せっかく遺言をのこしても知られないまま終わってしまうかもしれません。
ことに、法定相続分と大きく異なる遺言内容にする場合は、士業者など親族以外の第三者を「執行者」に指定しておくことで、家族の中で泥沼の言い争いになることを避け、他人が入るので比較的に冷静に話し合いをもってもらうことができるといえます。

遺言を作成するなら、まずは「執行者探し」。
信頼できる士業者や友人知人のほか、お墓が寺墓地にあるなら、ご住職に頼むのも確実性があると思います。ただし執行するには戸籍収集など専門知識が必要となるので、和尚さまと士業者の両者に就任してもらうと最も確実です。

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