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おひとりさま向け身元保証サービスって、大丈夫?

妻が契約したがっているけれど。身元保証なんてほんとうに必要なのかな……

ウチも子どもがいないから、いずれどちらかが亡くなれば「おひとりさま」だけど。
いまのところ資産運用して余力があるから、ボケないうちにそこそこの施設に夫婦で入っちまえば、身元保証は必要ないんじゃないかと思っているよ

なるほど。なるべく長く自宅で節約生活したい場合は、やっぱ必要なのかな

持ち家なんだから必要ないだろ。「身元保証がないと住むところにも困る」ってのはアレだよ、老朽化したアパートとかで立ち退き迫られたときの話じゃないのか?

生前準備。なにから手をつけたらよいのかわかりづらいだけに、「一括お任せ」と聞くと飛びついてしまいそうですよね。

今日は、高額な費用を一般社団法人やNPO法人に払う前に、知っておくべき根本的な問題点を整理して解説します。

【警鐘】「すべてお任せ」の身元保証団体は本当に大丈夫? 生前契約で高額を支払う前に知るべきワナ

「すべてお任せ」の団体がうまくいかない3つのケース

すべての身元保証サービスがよくないというわけではありません。

地域で小規模に事業展開されている場合は、悪い評判が立てばたちゆかなくなるので丁寧に運営されている場合が多いと思われますが、大々的に宣伝を打ったりしているところは、要注意かもしれません。

➊遺言による「残余財産寄付」の強要リスク

本人への十分な説明がないまま、残り全ての財産を法人に寄付する内容の遺言書にサインをさせようとする、っていうのは聞いたことがあるわ

厚生労働省が出している「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」においては、身元保証サービス等において、「遺贈を受けることを高齢者等終身サポート事業に係る契約の条件とすることなどは、死因贈与契約及び寄附(贈与契約)と同様、真に利用者の意思に基づくものであるか疑義が残るため、避けることが重要」と明記されています。

つまり、提示されたサービス対価のほかに「遺言等による寄付などを強要してはならない」と示されているのです。

しかしこれはあくまでガイドラインにすぎず、罰則も法的拘束力もないことから、現実の契約においては寄付強要はかなり横行していると言わざるをえません。葬祭業者の知人からは、

✅通夜・葬儀の現場に弔問に訪れた団体スタッフらが「故人は来週にも、遺産を全額、協会へ寄付するという内容の遺言を作成予定だった」などと遺族に詰め寄るのを見たことがある。四十九日とかではなく、通夜・葬儀の場でというのがエグい

✅火葬場で親族が、「叔父は全額寄付するって遺言たと言ってはいたが、あれだけ資産があるのに、なんで直葬なんだ! 人並みの葬儀にしたところで、寄付額が数十万円減るだけだろ!」と団体スタッフに怒鳴り散らしていた

といったエピソードを耳にしたことがあります。わたし自身も士業の無料相談会にみえたかたから、

✅テレビCMしている団体に一括お任せで180万円を払ったら、「この遺言書案に、公証役場でサインしてもらいます」って細かい文字の並んだ原稿を見せられたけれど、この内容で大丈夫でしょうか?

と相談されたことがあります。よく見ると、残余財産を団体へ寄付すると書かれていましたが、ご本人はそのような説明は受けていなかったようです。通常、公証役場の原案はとても大きな文字で印字されてくるのですが、その内容をわざわざ細かい文字で打ち直してありました。

一緒に相談を受けていた弁護士先生も、

「弁護士に執行まで頼んだって70~80万円くらいで済むのに(※)……なんで180万円も払っちゃったの?」と、びっくりなさっていました(※相場は、ご遺産の額によります)。

➋契約内容が複雑で「誰がいつ助けてくれるか」が不明瞭

・問題点: すべてお任せを謳うため契約範囲が広範になりすぎ、顔の見えない業者に委託される部分も多く、責任の所在や実行範囲が曖昧になりがち。

サービスの範囲がとても広く、目の届く範囲ではカバーしきれないため、個々のサービスは他の業者に委託されることが多いようです。

✅団体のスタッフが親身だったから、「この人にすべて任せられるなら」と母は契約したのに、いざ亡くなってみると遺品整理に来た業者が対話のひとつもないまま、大切なものも取り分けずにトラックにのせて処分してしまった

✅故人はエンディングノートに遺品は誰にあげてほしい、などいろいろと要望を書いていたのに、「遺言を作成されているので」と、あとから作成した公正証書遺言に書いてある最低限のことしか実現してもらえなかった

などなど、表面化しない問題は多々あるようです。

➌人件費・宣伝費で費用が消費され、資金繰り破綻のリスク

・問題点: 支払った高額な費用が、あなたのサポートではなく、亡くなるまでの長期間(亡くなるまでの数十年)の人件費や宣伝費、事務所家賃などに使われ目減りしてしまう。

全国展開で大規模にCMを打っているような団体の場合、資金繰りが苦しくなりサービス停止になる懸念があります。

過去に公益認定が取り消され、解散命令が出た団体もあります(ライフ協会)。

動画にある通り、最近も、葬祭業界内で「一般社団法人〇〇の会員さんの葬儀をやったが、支払いが半年も滞っている」など、勢いのある法人のよくない噂を耳にすることがありました。

百万円以上の金額を数百人から預かっているはずなのに、百万円に満たない葬儀費用を滞納しなければならないほど、資金繰りが悪化しているというのは、どういうことなのでしょうか。

50歳代・60歳代で契約される場合、生前サポートというのは20年以上の長きにわたると考えられます。団体創設者は志も高く、当初は適正に運営されていたとしても、代表理事が交代しスタッフも代替わりしてゆけば、経営方針も変わり、数十年後じっさいにサービスを受ける頃には期待したサービスが受けられないということも十分に考えられます。しかしそのときあなたは認知症になっていて苦情を言いだすこともできない……。

これらが、現況の「一括お任せ」の団体契約に潜むリスクです。

Part 2:【必要最低限】親族を頼れない人がすべき生前契約の3つの柱

そうはいっても、夫婦で終活セミナーに何度出ても、何から始めてどの契約をいつしたらいいのか、ぜんぜんわからないですよ。だから妻は「もう、無駄になってもいいから一括サービスでいい」と……

一括任せにせず、市民相談や士業との面談で、ひとつひとつの契約の意味を理解なさったうえで、じっくりと内容を吟味して進めてゆくことです。3つのステップをご理解いただけば、さほど難しいことではありません。

生前準備は、「財産の行方(遺言)」「生前の管理(認知症対策など)」「死後の手続き(死後事務)」の3つに分けて考えればシンプルです。

➊「遺言」:すべての準備のベース

・役割: 自分の財産(残ったもの)を誰にどう使ってほしいか死後の承継を明確に決める。遺言がないと、後の手続きが煩雑になり、自宅の放置などにつながるおそれがある。

・費用対効果: 公正証書遺言作成を士業に依頼しても、一般的に報酬は10万円程度から可能であり(公証役場費用別。資産が多額の場合は高額になる場合も)、一括サービスほどの費用はかからない。

➋「任意後見契約」:認知症になった後の生活の備え。公正証書で契約する

・役割: 判断能力が低下した時に、選んだ人(甥、姪、友人など)に財産・身上監護を委任する。認知症になる前に結んでおくことが必須。

・【認知症を発症しなくても!】病院や施設での強力なメリット: 任意後見契約を結んでいれば、親族以外であっても「私は将来の後見人候補者である」と伝えることで、病院での病状説明を受けたり、治療の同意ができたりするなど、親族同然の扱いをしてもらえる場合が多い。

・備えとしての価値: 認知症は遺伝だけでなく、交通事故や転倒でも発症する可能性があるため、誰にとっても「やっておいて損はない契約」といえる。

➌「死後事務委任契約」:葬儀と納骨のバトン

・役割: 亡くなった直後の事務(お迎え、火葬、納骨、諸手続き)を誰に任せるかを決めて、生前に公正証書で契約しておく。

・一元化の推奨: 任意後見人候補者に死後事務も依頼し、遺言で資産も遺せば、一人の信頼できる人物で一貫した対応が可能になる。

たとえば親身になってくれる士業者を見つけ、そのかたにもしものことがあっても、同程度の知識の仲間士業に引き継いでもらえるような内容(複委任あり)で公正証書を作成しておけば安心。

Part 3:【資産タイプ別】 信託を選ぶケース、任意後見で足りるケース

任意後見契約に加え、昨今よく耳にするようになった「家族信託」とは何なのか? どういう場合に必要なものなのかを知っておきましょう。

「家族信託」が必要なケース(運用・管理が必要な資産)

・役割: 賃貸物件(アパート経営)や多数の証券など、ご自身が管理できなくなった後も「適切な運用や積極的な管理を継続したい場合」に、それを特定の身近な人や民事信託士に信託するのが有効。

・費用と特徴: オーダーメイド契約になるため、弁護士などへの費用が高額(30万〜50万円以上)になりやすく、自宅と預貯金のみのシンプルなケースには向かない。

・任意後見の代用になるわけではない!:家族信託契約があれば任意後見がいらないわけではなく、認知症になった場合に備えた任意後見契約は別途結んでおくべき。信託契約時点で存在しなかった金融商品などが増えている可能性もあり、すべての資産を信託できるとは限らない。

・マメ知識:「わたしが亡くなったら、自宅などの資産を(再婚後の)夫に使ってもらいたい。しかし夫が亡くなったときは相続人(前婚の子)にはゆかず、わたしの子(夫にとって義理の娘など)に渡るようにしたい」など、「次の次に誰に渡す」といったことまで決めておきたい場合、民事信託契約が有用
※遺言では、予備的遺言で「もらうはずだった人が亡くなっていたら」を指定することができるが、「資産を渡した人が使いきれなかったら、次の次に誰にあげる」までは指定できない。

福祉型の「業務信託」という選択も

・役割: 法律(信託業法)に基づき、福祉型の信託会社として金融庁許可を受けた「ふくし信託株式会社」に財産管理を任せる方法。

・メリット: 「家族信託(家族のための民事信託)」では契約費用が高額になりがちだが、業務信託であれば完全オーダーメイドではなく、ある程度パターン化して商品化されているため、費用が抑えられる。

とくに「ふくし信託株式会社」は福祉型であるため、一般的な業務信託会社の中でも費用が安め。

ふくし信託株式会社には、「おひとりさま」向けとして、死後事務(葬式、納骨)に特化して信託できる低額な商品として「がんばろう信託」などもあり、初期費用を大幅に抑えることも可能。

また、ふくし信託株式会社は、民事信託士を認定している民事信託推進センターが母体となっており、同センターでは家族信託の権威である遠藤英嗣弁護士も主要メンバーである事例研究会も頻繁に行われているため、代替わりによる劣化が少ないであろうと推測されます。弊職自身、民事信託推進センターに3年ほど所属して、事例研究会も実地見聞しているのでオススメしております。

菩提寺を〝看取りステーション〟として活用する

・菩提寺のメリット: お墓がお寺にある場合、住職に相談し、危篤の際の訃報連絡先にお寺を指定しておくことが可能。

お寺は葬儀社や石材店との連携に慣れており、預金の一部を費用として託すことで、葬儀から納骨までをシームレスに担ってもらえる可能性が高いといえます(公営霊園の場合も、墓地許可主体となっている寺院があるので連携可能)。

とはいえ、ご住職が慣れていらっしゃらないと「そんなことは引き受けていない」と言われることもあろうかと思います。われわれ葬祭カウンセラーはそんな場合に備え、ケースを紹介してご住職に詳しく説明し、説得するサポートをいたします。

何十年か後にどうなっているかわからない団体に、残余財産をすべて寄付しますか? 

それとも、ご自身はじめ先祖が眠るお墓のある宗教法人に残余財産を託し、お墓と本堂の維持管理に活用してもらいますか?

【まとめ】お金で事務委託するより、顔のみえる相手と〝看取り合う〟ことが重要

「人を看取る」という体験によってのみ、人はじぶんの人生にもゴールがあることを身にしみて感じ、人生観を確立させてゆくことができると、わたしは確信しています。

血縁でなかろうと、縁をいただいた誰かを看取りつづける。自分が高齢になったら、ともに誰かを看取りあった仲間に、看取ってもらう――そのように「仲間と連携して看取る」ということを続けてゆけば、血縁を超えて、看取り合う社会にしてゆけるだろうと感じています。

甥姪であれ友人であれ士業者であれ、一対一で対話しながら、「じぶんの最期をどうしてほしい」と語らってゆくこと。信頼を築いた相手に、業者を選んでもらうこと。このように進めてゆくと、看取る側も、看取られる側も、双方ともに人生観を色濃くしてゆくことができるのです。

その意味で、人生の岐路に立ったときどうすべきかを答えてくれる宗教者は、看取りサポートの相手として最適です。もちろん住職のお人柄にもよりますが、たとえば余命宣告を受けた場合に、ともに悩み、なにをすべきかを考えてくれる――そんなタイプの和尚さまであれば、死後事務を含め、お任せすることができるでしょう。

看取り、看取られることで、おたがいの人生が深まってゆく。それこそが看取りの理想であり、昔の親族や村落の住民たちは、あたりまえに、そうした関係を築いていたと思います。

士業や身近な人々は、対価や報酬をいただくと同時に、命を削ります。時間を割いて、看取られる人の体験談や生きざまに耳を傾け、自分の人生へと活かしてゆきます。それは、数十年生きたポリシー、人生観、生活哲学というバトンを、次の世代の誰かに渡したことにほかなりません。

生きた証であるバトンを誰かに渡すことによって、その人の人生は安堵して閉じられてゆくのだと、わたしは数々の看取りを通して、感じています。

ここまで読んでくださったかたにはどうか、ポンとお金を払って看取りを一括委託するのではなく、対話を通してバトンを渡せる相手を探すことに、少々の時間と手間をかけていただきたいと強く願います。

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