私が死んだあとの遺品整理や公共料金の名義変更……昔は同居の親族が、無償でやっていたこと。
独居の人がほとんどいない時代には、こんなことを心配する必要はありませんでした。
いまは、ご夫妻で生活していてもいずれ生き残ったほうが〝独居〟になります。
施設入所されている場合でも、施設の引き払いなど最後の事務作業は残ります。
そこで、それらの事務処理を誰に、どんな形で依頼するのか? ということを記した文書を公正証書にしておくことが推奨されます。
死後事務を親族にお願いできるならば、死後事務委任契約書を作成する必要はありません。
死後事務委任契約書を作成するケースのほとんどは、親族にお願いしづらいため、遠縁の甥姪や縁のあった血縁以外のかたにお願いするかただと考えられます。
そのため、誤解や達成できないことまで盛り込んでしまうことを避けるためにも、公正証書にしておくことが望ましいといえます。
死後事務委任契約書を公証役場で作成しようと思いたったら、まずお近くの公証役場へ相談に行ってみましょう。
公証役場は相談だけでしたら、無料です。事前に、電話かメールでアポイントメントをとっておきましょう。
相談に行く前に、誰にその事務をお願いするのかを決めて、ご本人の承諾を得ておいてから、以下のことをメモして持参しましょう。
公証役場で死後事務委任契約書を作成するときの費用は、謝金額の明示がなければ、11000円です。
任意後見契約を同時に考えている場合でしたら、任意後見契約公正証書遺言(移行型)のうしろに組み込む形での作成も可能です(その場合も、1契約追加となりますので、11000円は加算されます)。
公証人は、定年を迎えた裁判官経験者など、法律にとても詳しい人のなかから選任されています。
法律には詳しい反面、元検事のかたなどですと、一般市民が相談に行っても法律用語をそのまま使って説明なさるかたも多く、言われた内容が半分くらいしか理解できないこともあります。
そうした場合に、通訳代わりとなるのが士業者です。
公証役場で費用がかかるのに、そのうえ士業の報酬まで払うのは……と思われるかもしれませんが、希望する内容と異なる公正証書になってしまっては元も子もありませんし、死後事務委任を受任してくれる人にも迷惑がかかってしまいます。
ご相談にいらしてみて、公証人の話がクリアに理解できなかった場合は、お近くの行政書士などに相談されるのも一案と思います。
あるいは、市民の側が出向くのであれば、管轄外の公証人でも公正証書を作成してくれますので、隣のエリアの公証役場を訪ねてみるのもよいでしょう。
何人かの公証人とお話しされてみて、納得のいく役場で書類を作成されることをオススメいたします。
死後事務委任契約に盛り込むべきことは、おおむね以下のとおりです(公証人連合会事例より)。
上記のなかから、ご自身のケースで必要な事項に絞って、メモにして持参してみましょう。
遺族や相続人がスムーズな手続きを行うためにも、死後事務委任契約の作成を検討しましょう。
十分な検討と相談を重ね、将来に備えましょう。