✅いつも見ている寺院規則には、都道府県庁の赤いハンコがない(コピーである)
✅寺院規則は長らく目にしたことがないが、とくに問題もないので放置している
✅墓じまいで空いたスペースに、永代供養墓/合葬墓の建立を考えている。すでに墓地許可がとれているスペースなので、役所に申し出る必要はない
✅責任役員のなり手がなく、数年欠員があるが、宗派からも都道府県からも何も言われないので放置している
✅ペット供養を始めようと思うが、墓地ではないので役所に届け出る必要はない
✅不動産貸付や葬祭ホールをやっているが、登記情報に「事業の内容」が登記されていない
👉これらの項目、ひとつでも思いあたる宗教法人の関係者の皆さまは、ぜひ記事内容をお読みください。
宗教法人さまより、さまざまなご相談をいただきます。昨今は、例示したようなご相談が多くなっています。
宗教法人の「規則」は、株式会社における「定款」と同じとても重要な、運営の基本を述べたものです。「規則」など何十年も見たことがない、とおっしゃるご住職もいらっしゃいます。宗教者はほんらい、仏法など信仰上の「法」を第一となさるべきで、現世の人を縛る「法律」を第一とすべきではないのかもしれません。
しかし、「法人組織」である以上は、「宗教法人法」という国家の法律に従わなければなりません。宗教法人法第18条には、「宗教法人には、三人以上の責任役員を置き、そのうち一人を代表役員とする。」と明記されています。「以上」とありますから、規則によりもっと多い定数を掲げていらっしゃる場合もあります。
「規則を見たことがない」というご住職さまはぜひ一度、ご自身のお寺の規則を取り出して、役員定数が足りているかをご確認ください。
死亡等により責任役員の定数が欠けているのに放置することは、「法類もみんなそうだと言っている」にしても、「地域でそんなお寺はいっぱいある」にしても、明らかなる「法律違反」です。
一般市民の多くはサラリーマンで、法令遵守やコンプライアンスをうるさく言われる環境下で、現役時代をすごしています。「先生」と呼ばれ尊敬されるべきご住職が、法令を遵守していないとなれば、信頼は失墜してしまいます。
現世の「法律」に縛られず自由になさりたい場合は「宗教法人」を解散し、任意団体(法律上は「権利能力なき社団」と呼ばれる宗教団体)として活動されたらよいのです。ただし、包括法人のある宗教法人が解散するとなれば、財産は同宗派の他の寺へ吸収され無一文になってしまいますから、現実的ではありません。つまり、最低ラインの法令は、遵守してゆくしかないのです。
お寺の世界にはさまざまな慣習があり、「一般社会ではそうだろうが、お寺は違う」ということも、多々あろうかと思います。
しかしながら、戦後に宗教法人法が制定されてから、昭和・平成・令和と3つの時代をまたぎ、カタカナ表記であった民法も読みやすく改正され、戦前民法の名残もほぼなくなっています。
お墓をたてたら、末代まで何代にもわたり「継ぐのが当たり前」、「継がなくなる(=離檀する)ならばそれなりの離檀料を払うべき」という慣習を守り抜いていらっしゃるお寺もあるでしょう。
しかし、戦後民法とともに家督を継ぐ制度がなくなって、はや70年余(約3世代)が経過しています。
戦後すぐの頃には、農業なども自営業とカウントすれば自営業者が6割でした(総務省・労働者統計※)。そのほとんどは長男が継いでおり、親子で同じ仕事をしていたと推察されます。自営業が過半であれば、民法が変わっても「継ぐ」という感覚は一般市民の間にもあったでしょう。
しかしいまは、自営業の割合は1割強にまで激減し(※)、過半数がサラリーマンなのです。
市民の一般的な感覚では、「イエ(家業)を継ぐ」という概念はもうありません。
お寺と、葬祭業者と、石材店(つまりお寺とその周辺事業者のかたがた)は、いまだ親子で同じ仕事をされている割合が高く、まだまだ「継ぐ」という感覚をお持ちなのだと思いますが、全国的にみれば〝1割の例外〟なのです。
弊事務所にはしばしば、「墓じまい」の相談電話があります。ほとんどは、お墓をしまって離檀しようとしたら、高額の離檀料を要求されて話が進まない、という内容です。
私はまず、「お墓を使わなくなって返却するときには、墓石もカロートも撤去してきれいな更地に戻さなければならない」ということをご説明します。
お寺から提示された金額に、そのための撤去工事費用が含まれているのであれば、さほど法外な金額ではない場合が多いからです。
加えて、閉眼供養のお布施も一霊ごとにお包みすべきであることも、お伝えします。
おおかたのご相談者はお寺さまと折り合い、納得のいく金額をお納めして改葬を進められます。
しかし中には、「ビタ一文まけることはできない」「長年の感謝の気持ちをその程度の金額にして表せないとは」などと罵倒され、もう一度ご相談にみえるかたもあります。
こんどは、お住まいの市町村の改葬担当の窓口で、ご事情をお話しするようお勧めします。
以前は、「市役所では、お寺さまとよく話し合っていただくしかない、と言われました」というお声もあったのですが、昨今ではなんと、
役所からお寺へ、指導の電話をいたします。
指導してもなお離檀料をよこせと言われた場合、これまで支払われてきた管理費の領収証や振込記録があれば、お寺のハンコがなくても改葬許可証を発行します。
という市区町村も出現しています。
これはいったいどういうことなのでしょうか。
行政庁が、お寺の要求を「理不尽である」と解しているということにほかなりません。
また、お寺が墓地の管理者として適切な任務を果たしていないと、見限っている事実でもありましょう。
〝慣習〟という不文律にいつまでも固執していては(あるいは各宗派が、そうしたお寺を野放しにしつづけるのであれば)、伝統仏教の宗教法人全体が、行政や市民から見放されてしまうということにもなりかねません。
冒頭の例示の3つめ、「墓じまい」で空いたスペースを活用して、継がなくてもよいタイプの新しい永代供養墓をつくるということも、全国的によく行われています。
もともと墓地許可がとれている中に墓をつくるんだから、許認可などいるはずがないだろう
こちらも、よくある誤解です。
墓地許可申請のさいは、基数や寸法、通路の幅などを図面にして許可を得ています。
いわゆる先祖代々の墓が数基あった場所に、何十人も入れる新たな永代供養墓をつくるのであれば、大きな仕様変更となりますから、役所の側では「届出をしてもらいたい」と考えています。
地域ごとの条例にもよりますが、とりわけ注視されるのは「通路の幅」です。車椅子などでも通れるよう、1m程度の幅を確保することが多くの条例にうたわれています。
届出をしなくても罰金や罰則があるわけではありませんが、次の世代へ問題を先送りすることとなります。
墓地の大きな改築があったので届出をしようとしたところ、先代の時代に拡張していた区画について、未届であったことが発覚したり、図面も現況とだいぶ違っていたりということもあります。継いだご住職からみれば、「先代は、届出をちゃんとしてくれていなかった」ということになってしまいます。
ご面倒でも、大きな工事の前には行政庁に相談をなさり、指導をあおぎながら進めていただくことを強く推奨いたします。
✅いつも見ている寺院規則には、都道府県庁の赤いハンコがない(コピーである)
✅寺院規則は長らく目にしたことがないが、とくに問題もないので放置している
➡原本の謄本は、宗教法人に備え置くことが法定されています(将来、規則変更をする際などには「原本の謄本」が必要となります)。都道府県に謄本請求をしましょう! 紛失の経緯を記した理由書などが必要な場合は、行政書士が代筆いたします。
✅墓じまいで空いたスペースに、永代供養墓/合葬墓の建立を考えている。すでに墓地許可がとれているスペースなので、役所に申し出る必要はない
➡平成24年ごろに墓地許可の主体が都道府県から市区町村にかわり、自治体ごとに通路幅などの「条例」が新設されています。墓地をいじるときには、通路幅やお墓の基数を申請する条例になっている自治体が多いです。また、墓地管理者が先代住職や先々代住職のままになっているケースも散見されます。手を加えるときには、必ず市区町村(離党などは都道府県)の担当部署に連絡しましょう。
✅責任役員のなり手がなく、数年欠員があるが、宗派からも都道府県からも何も言われないので放置している
➡責任役員は「3名以上(で規則に定める人数)」と法定されています。法律逸脱状態ですので、放置してよいはずがありません。なお、責任役員の定数が多すぎて人数を埋められない場合、定数を3名までに減らす「規則変更申請」が可能です。
✅ペット供養を始めようと思うが、墓地ではないので役所に届け出る必要はない
➡ペット供養墓に関する「条例」を定める行政庁が増えています。また、「墓地」なのに人間以外の墓として「事業」をおこなっていたとして、「雑種地への地目変更」を求められたケースもあります。必ず、管轄の役所に相談に行ってから建立しましょう。
✅不動産貸付や葬祭ホールをやっているが、登記情報に「事業の内容」が登記されていない
➡公益事業(保育園や福祉施設の経営)や収益事業(不動作貸付や席貸業)を行う場合は「目的変更登記」が義務付けられています(宗教法人法52条)。その目的変更登記を行うためには、法人規則に「事業」の章をもうける「規則変更」が必要です。ぜひ、行政書士にご相談ください。
弊事務所では、行政庁との折衝のなかだちや、大規模工事の承認がなされた責任役員会の議事録を作成いたします。
日帰り圏内のお寺さまでしたら、ご住職は業者さまとの折衝に専心いただき、立入調査の当日だけご案内いただけば、役所へ出向いていただく必要はございません。
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